京都のお客様の依頼で”少し変わった”内容の講演をしてきました。
「モロコの甘露煮から考える環境問題」というタイトルで、濃尾平野の伝統食であるモロコの甘露煮から私の専門とする環境工学や生物工学の視点で、伝統食の在り方や伝統食文化を支える地域環境の保全と利用について述べさせて頂きました。
伝統食は地域環境が育む豊かな生物資源と、その地域で育まれてきた文化を背景とした伝統知に支えられています。
講演では、お客様より頂いたモロコの甘露煮に”見慣れない魚”が紛れ込んでいた事からスタートし、この魚の正体を探りながら、伝統食であるモロコの甘露煮を取り巻く様々な問題や課題を取り上げました。
現在、モロコを産出する濃尾平野の地域環境は、水質汚濁や廃棄物の逸出といった環境汚染の進行、河川工事や土地改良といった防災や産業振興のためのインフラ整備、伝統文化の保護や地域環境の保全に対する住民の無関心などにより危機に瀕しています。
講演では、「闇雲にインフラ整備を否定するのではなく、如何にして上手に地域環境の保全と利便性のある生活を両立しながら、地域生物資源を利用する伝統食を守っていくのか?」という点を工学の立場から迫ってみました。
また文化と技術の接点を「伝統食の継承」という視点から見つめ、「次世代に何を残すべきなのか?」、「どの様にして残していくのか?」という点を提唱させて頂きました。
感情的に環境保護を訴えるのではなく、技術的な視点から最適な形を求めていくという形が、我々技術士に求められている視座であると思います。
会員の皆様には、いずれテクニカルレポートと解説動画の形でこの講演内容の詳細を公表させて頂きます。
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