プラスチック製バンドは荷物の結束などにとても重宝する材料です。特に段ボールの結束に多く使われているのをご覧になられた方も多いと思います。
プラスチック製バンドの素材には従来、ポリアミド(PA)やポリプロピレン(PP)が多く用いられていましたが、ポリプロピレンの機能向上や成形技術の進歩により、PA製のバンドは姿を消しました。
最近では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、特にボトル由来の再生PETを原料としたものや、紙とプラスチックを複合化した素材を原料として用いたものも見られます。
ところで皆さん、このプラスチック製バンドの表面についている菱形の模様は一体何のためについていると思います?
技術顧問をさせて頂いているプラスチックの成形工場での勉強会の際に、入社1年目の若手技術者に聞いてみましたところ、「滑り止めでしょ。」との答えが返ってきました。
確かに滑り止めの効果もあるのでしょうが、プラスチックの成形加工に携わっている技術者の答えとしては全くダメです。
実は、この模様はバンドの物性と深く関わっています。
プラスチック製バンドは荷物の結束に用いるため、相応のバンドの縦方向(長い方)引張強度が求められます。この引張強度を手っ取り早く高める方法としては、「延伸」という処理を行います。
延伸はプラスチックバンドを加熱しながらバンドの縦方向に引っ張ることで、プラスチックの分子を縦方向に並べて結晶化度を上げるという操作で、延伸をかけるほど引張強度は大きくなります。
ところが、延伸をかけることでプラスチックの分子が並ぶと縦方向に対する引っ張りには強くなるのですが、横方向からの引っ張りに対しては弱く、バンドが裂けてしまいます。
これは、ビールのおつまみで売っている「さけるチーズ(ストリングチーズ)」みたいなイメージです。
材料としては、これは致命的な欠陥です。そこで延伸したプラスチックバンドにスタンピングで菱形の模様をつけ、隣り合うプラスチック分子同士を融着させて縦方向に裂けるという事態を回避しているのです。
この手法はとても大きな意味を持っています。縦方向へ裂ける事を防ぐ事ができる訳ですから、より延伸をかけて引張強度を増すと共に、薄手のバンドを作る事が可能となりました。
薄くて引張強度に優れるバンドは柔軟性も増すため、結束において対象物との密着性を増す事ができ、結束の対象物が軟らかくてもキッチリと結束することが可能となったのです。
プラスチック成形加工、実に奥が深いですね。
Commenti