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  • 執筆者の写真本堀雷太

【環境法務】プラスチック資源循環法のポイントをまるっと整理!

※この記事は、会員向けブロク「技術士本堀雷太のアイデアノート」に掲載された記事の特別公開です。会員向けブログは、顧問契約して頂いているお客様とオンライン会員(有料)の皆様のみ閲覧可能となっています。閲覧を希望される方は、当事務所まで遠慮なくお問い合わせ下さい。契約金額等はこのホームページの「業務内容のご案内」をご覧下さい。



 皆様ご存知の様に、2022年4月1日より「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(略称:プラスチック資源循環法)」が施行されます。


 行政の発表では、法律の略称が「プラスチック資源循環法」となっていますが、これでも長いので、この当事務所では「プラ循法」という略称を使っています。このブログでも「プラ循法」と略しますので宜しくお願い致します。


 業界的には、規制や手続などの制度面での変更や、補助金・助成金・税制優遇などの助成制度の動向に大きな注目が集まっており、私の事務所にも連日多くのお問い合わせを頂いています。


 しかし、中長期的に見てみますと、プラスチック製品の設計・製造から使用、廃棄、リユース、リサイクル、処理、処分に至るまでのライフサイクル全般に多大な影響及ぼす法律であると言えます。


 故に助成金や補助金などによる資金調達といった目先の利益に囚われるのではなく、長いスパンでの持続性なビジネスモデルの構築を見据えた適切な対応こそが重要です。


 特に当事務所のお客様におかせられましては、この法律の施行に伴って従来のプラスチックリサイクルの枠組みが大きく変わる可能性を十分に踏まえて頂きたいのです。


 法に基づく行政手続の詳細や各種の助成制度は、施行後に徐々に具体化されると思われますので、現段階ではこれらが具体化された時に備え、施行に際しては基本的な考え方を理解しておく事が必要です。


 もちろん、専門家の間でも、どこに注目するかでこの法律の見方は大きく変わりますし、講じられる具体的な対応策も異なる事になります。


紙面の関係もありますので、今回は”私の目(あくまでも私の目です)”で見たこの法律を理解する上でのポイントを簡単に解説させて頂きます。


 この法律は、「プラスチックの適切な利用と適切な処理・処分を目指す事」を主な目的としています。先にも申しました様に、色々な見方があると思うのですが、私はこの法律において、


(1)プラ循法の環境法体系における新たな位置付け=「素材に着目した包括的な法制度」

(2)ステークホルダー(事業者、消費者、国、地方自治体)の役割(責任)が明確化

(3)「合理化」という視点


の3点が重要であると考えています。順を追って簡単に見て参りましょう。


 まず一つ目の事項についてですが、我が国における環境法の体系は「環境基本法」を出発点として重層的に構築されており、この重層的な法体系の中にリサイクルに関係する各種の法令も盛り込まれています。


 従来は適正なリサイクルを推進するため、「個別物品の特性」に応じて、「容器包装リサイクル法」、「家電リサイクル法」、「食品リサイクル法」、「建設リサイクル法」、「自動車リサイクル法」、「小型家電リサイクル法」が制定され、それぞれの法律を担当する所轄官庁が中心になって運営が進められていました。


 プラスチックに関しては、例えば容器包装に用いられているプラスチック製包装は容器包装リサイクル法で対応し、家電の躯体などに利用されているプラスチックは「家電リサイクル法」や「小型家電リサイクル法」で対応するなど、同じプラスチックを使用した製品でも物品の特性に応じて対応するリサイクル法が異なります


 ところが、今回施行されるプラ循法は、個別物品の特性に着目するのではなく、プラスチックという「素材」に着目した「包括的な法制度」なのです。


 これは従来の各種リサイクル法とは大きく異なる視点でのアプローチとなります。


 故にプラスチックという素材が使用されている製品が包括的に規制の対象となる訳で、従来の各種リサイクル法と整合性を保った上で、プラスチックの適切な利用と適切な処理・処分を目指す事になります。


 これはプラスチックリサイクルの世界で事業を行っておられる方々にとっては、「リサイクルの裾野が広がる!大きなチャンスだ!」と捉える事が可能であります。


 しかし逆に、プラ循法に適切に対応できなければ、リサイクルビジネス自体を持続的に営む事ができなくなるリスクをも孕んでいます。


 従って、プラ循法を理解し、適切に対応するための出発点として、このプラ循法が「素材」という視点に着目した少し毛並みが異なる法制度である事をよく理解して頂きたいです。



 次に二つ目の「ステークホルダー(事業者、消費者、国、地方自治体)の役割(責任)が明確化」という点についてです。


プラ循法の第四条において、「事業者及び消費者の責務」が明記されており、事業者に「リサイクルを含む再資源化」を促し、事業者と消費者に対して「分別して排出」に努める事を求めています



 またプラスチック使用製品についても、使用の合理化、廃棄物の排出抑制、再生製品の積極的な使用を事業者と消費者の双方に求めています。


 特にワンウェイのプラスチッ使用製品に関しては、提供事業者(小売業者、サービス業者)が「取り組むべき判断基準」の策定が求められており、条文ではこの点に関して、主務大臣によりワンウェイプラスチックを多く提供する事業者への勧告・公表・命令の措置が行われる旨が記されています。プラスチック製品の使用の合理化を法制度で整えていくという趣旨ですね。


 排出抑制に関してですが、条文では排出事業者等に「再資源化計画」の策定を求めており、この場合、主務大臣が認定した場合、認定事業者は廃棄物処理法における「業の許可」が不要になる旨も記されています。


 業の許可の扱いに関しては、許認可業務を実際に担う自治体の現場での判断が混乱する可能性もありますが、恐ろしく煩雑な手続は必要な許認可事務を軽減する事で排出抑制と再資源化を促していこうという所轄官庁の狙いが伺えますね。


 なお、一つ注意して頂きたいのが、「多量排出事業者」の方が負う義務です。


 プラ循法では、「当該年度の前年度にプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が250ton以上ある事業者」を多量排出事業者とし、「排出の抑制と再資源化等の目標設定ならびに計画的な実施」を「義務」とし、この目標と達成状況を毎年公表する事を「努力義務」としています。


 250トン/年の排出なんて、多くの成形業者様や原料メーカーでは普通に見られるものです。また食品や物流関係など多量に包装資材を利用する業者も多量排出事業者になる可能性は高いですよね。


 従って、この多量排出事業者に果たされる義務に関しては、この会員向けブログをご覧の排出事業者の皆様の中にも該当する方が多くおられるかと思います。


 法の施行に先駆けて、早めに排出抑制や再資源化に向けた仕組み作りを急がなければなりませんね。


 排出抑制や再資源化の具体的な手法や事例は、機会を改めて追々この会員向けブログや当事務所で提供させて頂く各種レポートや解説動画などで取り上げて参ります。


 さて、プラ循法では、事業者と消費者の責任ばかりでは無く、国や地方公共団体の責務も定めています。第五条、第六条の条文を以下に示します。



 第五条で、「国は、プラスチックに係る資源循環の促進等に必要な資金の確保その他の措置を講ずるよう努めなければならない」、「国は、プラスチックに係る資源循環の促進等に関する情報の収集、整理及び活用、研究開発の推進及びその成果の普及その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」と記されており、これが今、巷で騒がれている助成金や補助金の根拠となる条文です。


 助成制度については、法の施行後、具体化した段階でこの会員向けブログやお客様向けの電子メールなどでご紹介させて頂きます。


 ここで一つ、注目しておきたい条文を見ておきましょう。第六条の中にある「市町村は、その区域内におけるプラスチック使用製品廃棄物の分別収集及び分別収集物の再商品化に必要な措置を講ずるよう努めなければならない」です。


 これはエラい事です。市町村が一般廃棄物中のプラスチック使用製品廃棄物の分別収集及び分別収集物の再商品化に必要な措置を講ずる必要性が述べられているのです。


 市町村にとってもの凄く大きな負担になりますね。


 プラスチックは他素材に比べ密度が小さい事が大きな売りなのですが、逆に言えば使用後の状態のプラスチックのみの輸送はあまりに軽量で非効率です。空のボトルなんかは空気を運んでいる様なもので、輸送コストばっかりが膨れ上がっています。


 おまけに収集したプラスチック廃棄物を再資源化するためには、素材毎の分別や適切な中間処理を施していく事が必要です。機械類による自動分別にも限界がありますので、最終的には人力による手作業の分別が必要となり、これも大きなコスト圧となります。


 実際、多くの自治体では、プラスチック廃棄物の分別収集に二の足を踏んでいます。


 実は当事務所地である愛知県名古屋市は、以前からプラスチック廃棄物の分別収集を実施し、再資源化を行っているのですが、コスト的にはモロにド赤字です。製造業が盛んで財政状況が比較的安定している名古屋市ですらこの状況ですから、中小の市町村での分別収集へのハードルの高さが伺えますね。


 さて、本題に戻ります。最後に取り上げるポイントは「合理化という視点」です。


 先にも申しました様に、プラ循法の条文では、事業者や消費者に「プラスチック使用製品の使用の合理化」を求めています。


 そのため、事業者は環境に調和した形でのプラスチック製品の使用を消費者に提案する必要性に迫られ、プラスチックからの素材の転換(代替化)や処理やリサイクルに適した仕組みを盛り込んだプラスチック使用製品への切り替えを進めています


 当然、プラスチックのリサイクルにもこの「合理化」という視点を盛り込む必要があります(なぜかプラ循法の条文にはこの点が全く書いてありませんが・・・)。


 例えば、プラスチックリサイクルの優等生として広く知られている発泡スチロールのリサイクルシステム「J-EPSリサイクル」(株式会社パナ・ケミカルが確立したビジネスモデルであり、「J-EPS」という文言はパナ・ケミカルの登録商標です)において、発泡スチロール製魚箱の表面に貼り付けられている産地表示などのラベルにはポリスチレン(PS)をフィルムに加工したものが用いられています。


 これは発泡スチロール製魚箱の構成材であるポリスチレンとラベルの素材を一致させる事で、中間処理を施す際に分別する手間を省き、後工程の再生処理をスムーズに進めるためです。



 つまり、プラ循法における「使用における合理化」とは、本来、「リサイクルなどの適切な処理・処分における合理化」という視点も踏まえたものでなければならないのです。


 この川下側から見た「合理化」というものが、プラ循法施行後のプラスチックリサイクルの深化を進める上での大きな戦略的なポイントとなります。


 紙面の関係で今回はここまでにしますが、今後この会員向けブログでは、折に触れて「プラスチック廃棄物の物流や処理における合理化とはどの様なものなのか?」という点についてもう少し突っ込んで考えてみたいと思います。




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